1 概要
些か古い話のことであるが,二本松市にはかつて,とあるオンボロで有名な劇場があったという。
この劇場で公演をした者によると,最終日の朝,皆が靴を履いたか履かないかのうちに,二階の楽屋の障子を叩くような音や畳をはくような音がし,背筋がゾッとするような感覚に陥ったのだという。
なんでもこの楽屋では,かつて,ある大家の娘が二枚目役者に恋をしたが結局捨てられ,後に残されたのは自身とお腹の子供だけとなり,思い悩み最後は二枚目役者がいた楽屋で自殺をしたのだと言う。
それからと言うもの,どの劇団がこの劇場に来ても,男性が一人でいるとこの怪音が聞こえたのだという。
2 解説
旅芸人などが地方にある劇場で公演をし,それを娯楽としていた,相当古い時代の話(明治~昭和初期)であり,この劇場がどこなのか,現存しているのかは残念ながら不明である。