1 概要
丹後沢は,かつて存在していた「磐城平城」の本丸と二の丸,三の丸の間の内堀であった所で,現在は公園として整備されていて,沼の周りの遊歩道を散策することも可能である。
古い話であるが,かつてこの丹後沢には幽霊屋敷が存在していたという。
その屋敷では,夜中,家人が寝ていると突然天井で重苦しい「ドドウン」という音がしたかと思うと,急に胸の辺りが押し付けられるように苦しくなり目が覚める,ということが繰り返し起き,仕方なく起き上がると目の前に黒い着物を着た人影が見える,などという現象が発生したのだという。
この屋敷はかつて隠居所として建てられたもので,その隠居が妾とともに暮らしていたところ本妻が狂い死にのような形で死亡,その後,女性の幽霊が目撃されるようになったのだという。
2 解説
何分古い話(戦後まもなく)のことであり,現在も丹後沢にこの幽霊屋敷があるかは不明であるが,仮に取り壊されて新しい家が建てられたとしても,その地に棲み付く怨念が今も怪奇現象を発生させているやも知れない。
なお,丹後沢もまた因縁めいた場所で,磐城平藩に入部した鳥居忠政がこの地に城を築城しようとした際,何度も決壊を起こす場所に人柱を建てることにした。
その際,菅波村の菅波丹後(箱崎丹後と言う90歳を過ぎた老人が自ら名乗り出て,自身の孫を取り立ててくれることを忠政に頼み,人柱となったのである(そのため,同人の名前を取り「丹後沢」と称した。)。
さて,私は独身時代,この丹後沢の近くにある四軒町に一時期住んだことがある。この丹後沢附近も何度か訪れた記憶があるが,特に何も感じたり遭遇したりしたなかった。ただ,人によっては,あまりこの地には訪れたくはないようであり,何か未だに「いわく」があるのかも知れない。