栃木市にある大中寺は久寿元年(1154年),真言宗寺院として創建(現在は曹洞宗)された古刹である。
同寺は,江戸時代の作家,上田秋成が書いた「雨月物語」にある「青頭巾」の舞台となった寺でもあり,青頭巾の話と関連した内容も含んだ,「大中寺七不思議」が残ることで有名でもある。
①根なしの藤
これは,青頭巾を成仏させた高僧・快庵妙慶禅師が青頭巾の供養のため,その亡骸を埋めたところに禅師の藤の杖を刺したところ成長したとされる藤である。
②枕返しの間
この部屋に宿泊した際に本尊に足を向けて寝ると,朝には180度回転する現象が起きるのだという。
③東山一口拍子木
東の方にある山で拍子木の音がすると,必ず寺に異変があるという。
④馬首の井戸
かつてこの地で戦があり,破れたこの地の豪族・晃石太郎が大中寺に逃げ込み,かくまってもらおうとしたが,後難を恐れ寺は拒んだため,それを恨んだ太郎は馬の首を切り落とし,井戸に投げ込んだ。
それからというもの,この井戸では馬の断末魔のいななきが聞こえるという。
⑤開かずの雪隠
上記の太郎の妻は大中寺で落ち合う手はずであったが,いくら待っても太郎がこないため,死んだものと思い雪隠で首をくくり死んだ。その後,この雪隠の扉は堅く閉ざされ開けられなくされた。
⑥油坂
かつて,本堂から油を盗んで追われた僧侶がこの石段から転げ落ち死んだ。
それからというもの,この石段を使うと災いが起こるといい,現在は柵があり封鎖された。
⑦不断の竃
ある修行僧が,竃の中で居眠りをしていたところ,それとも知らずに下男が焼き殺してしまう。そして,それ以来,火を絶やさないという。
なお,上記④と⑤に登場する晃石太郎は,地元に残る「佐竹小太郎」という人物の逸話に類似している点があるようである(同人は戦国時代を生きたとも言われているが,詳細は不明である。)
ところで,このように不思議な事象が残る大中寺だが,かつて,テレビ局の怪奇番組で取材をした際には,ラップ現象や人魂が飛び交うなどの怪奇現象が発生,お蔵入りする程凄まじい映像が撮影されたと噂されている。