今回,心霊スポット候補地としてご紹介するのは「海」である。
古来より,海では漁師,海運業者,釣り船など,船舶にて働く方が多く存在していた。
そして,それらの方々は時として事故に遭い,その命を落としていった。
それは技術の発達した現在でも同様であり,「板子一枚下は地獄」という言葉があるとおり,海上での船舶による仕事は命懸けでの仕事なのである。
さて,海上で命を落とされた方は「舟幽霊」になるものと信じられており,福島県湾岸部においても同様に信じられていた。
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ところで,舟幽霊について,その存在を調べてみると,
①海上に人の姿で現れる
②姿を見せず,人間が乗っている舟を止めてしまう
③誰も乗っていない舟が人間の前に現れる
というケースに分類されるようである。
(なお,③については「幽霊船」とも言えなくもないが,現在,幽霊船というと,人が誰も乗っていない漂流中の船を指すことが多いようなので,舟幽霊の定義の中に含むことにする。)。
現在も,海上を航行していると,これら舟幽霊に遭遇する可能性があるのかも知れない。
ところで,③については,イメージ的に,古くからある,櫓を使い漕ぐ和船であるように感じている(なお,ここでは「舟」と「船」の字を使い分けている。前者は小型の,後者は大型のそれを表す字であり,それを意識しているつもりである。)。
この現代の時代に,③のような舟幽霊が現れるはずが・・・とお思いかも知れないが,調べてみると,次のような話があることを確認した。
大正8年(1919年)8月,種子島南方にある岩礁付近で,大日本帝国海軍の志自岐丸が座礁,沈没した。
乗組員120名中生存者は7人,死者15人,残りの乗組員は全て行方不明だったという。
その後,種子島付近では,夜釣りに出た漁師が何度も,何百という電気を灯した軍艦が浅瀬を航行する様子を目撃したのだという。
もしかすると,一般の舟(船)だけではなく,軍艦クラスの船もまた,このように現世に姿を現すのかも知れない。
最後に,舟幽霊は盆や大晦日に現れるとされており,現在もこの時期に海に出ることは忌まれていることが多いと思われる。
また,万が一舟幽霊に遭遇した場合には,ご飯や塩,水,茶,味噌,豆等を食べ物を海に入れる,苫(菅や茅で編んだこも状のもの)や灰,薪を海に入れる等,地方により様々である。
それだけ,舟幽霊の存在が信じられ,かつ恐れられていた証なのだと思われる。