1 概要
小雨の時化の夜には,モウレイ(モウレイ船)が出るから気をつけろ,と漁師達は言うという。特に,前に船が沈没したことがある場所はモウレイ船の出る場所である。
モウレイ船は,普通の船は追い風で海上を走るのに対して向かい風に乗り海上を走るという。向かい風の帆のさばきは,よほどの巧みな者でないと船を転覆させられるとのことで,向かい風の中を走る船に気がついたら,モウレイ船だから注意する必要がある。そして,モウレイ船に追われると,とても逃げ切れないという。
また,モウレイ船からは人の声が聞こえるが,人の影は見えないとされる。そして,柄(柄杓)を貸せ,と呼びかけられる。その際,底を抜いた柄杓を貸さないと,柄杓で海水を汲み入れられ水船にされてしまう。
もし,モウレイ船に出会った場合,船の表へ飯をどっさりまくと消えるといわれている,海で死んだ人は腹を減らしているからそうするのだ,といわれている。
2 解説
海で水死した人が妖怪化したものが上記のモウレイ船の話のようで,同様の話は全国各地に伝わっている(舟幽霊など。)。
特に,底を抜いた柄杓を貸す話というのは,昔話の中にもよく出てくるものである。
エンジンを動力とする船を用いる現在において,帆を使うモウレイ船が現れるのか,その場合,エンジン動力の船より速力が上なのか,多少興味のあるところである。