１ 概要
昔，いわき市には「ダイダラボー」と呼ばれる者がいた。
ダイダラボーは，湯ノ岳の頂に腰掛け，小名浜にある照島辺りの太平洋に手を突っ込み，魚や貝を採っては美味そうに食べていたという。
また，大浦村上仁井田細谷にある「しうじん原」にある，八畝歩（約792㎡）ばかりの大きな足型の湿田はダイダラボーの足跡と言われているほか，平窪村四波にある石森山中腹の五畝歩（約495㎡）ばかりの窪地，大野村山田小湊にある高倉山の麓にある沼ノ原にある一反歩（約991㎡）ほどのヤチボ，大野村駒込にある約七，八畝歩程の溜池，草野村下神谷赤沼の「まんごう」にある約一反歩のヤチボ，双葉郡久ノ浜不動前近くにある溜池，双葉郡大久村小山田前の山にある約一反歩の田，双葉郡広野村折木にある窪地，双葉郡広野村北迫の二ツ沼もまた，ダイダラボーの足跡と言われ，三森山に腰掛けて海で顔を洗ったという。
２ 解説
ダイダラボーは「ダイダラボッチ」と呼ばれる巨人で，日本全国で伝承されている。山や湖沼を作ったという伝承が多く，国造りの神々に対する巨人信仰がダイダラボッチを生んだと考えられている。
上記の話の中で，ダイダラボーが魚や貝を食べていた話があるが，昔の人々は，海から離れた場所に存在した貝塚を，ダイダラボーが魚や貝を食べた後であると考えていたようで，ダイダラボッチと貝塚が関連する話が県内の別の場所でも確認できている。
なお，上記の話に出てくる地名については，大浦村上仁井田細谷は「四倉町上仁井田」（北細谷と南細谷がある。），平窪村四波は「平四ツ波石森」，大野村山田小湊は「四倉町山田小湊」，大野村駒込は「四倉町駒込」，草野村下神谷赤沼は「平下神谷赤沼」，双葉郡久ノ浜不動前は「久ノ浜」，双葉郡大久村小山田前は「大久町小山田」，双葉郡広野村折木は「双葉郡広野町折木」，双葉郡広野村北迫は「双葉郡広野町下北迫」を指すものと思われる。
