1 概要
狐憑きになった人は目が釣り上がり,油揚げや赤飯などを好んで食べ,戯言を口走り歩きたがるものだという。
明治時代のこと,ある子供が狐憑きになり村中を探したところ,郷倉の縁の下に青くなっていたことがあったという。
また,隣村に住む別の子供がやはり狐憑きになり村中で探し回ったところ,一週間も経ってから,田戸の不動様に青くなりすくんでいたところを見出したとのことである。
狐は他にも,子供の夜泣きも引き起こすという。
2 解説
狐憑きは日本全国で見られた症状で,憑かれた者は精神病のように異常な状態になるとされており,現在では,狐憑きは脳の疾患による錯乱状況が原因ではないかと推測されているが,何故油揚げや赤飯を好んで食べるのかは説明が付かないようにも思われる。
人に憑りつく狐というのは野狐だけではないらしく,管狐やオサキなど,人間が使役する(しているとされる)狐もまた憑りつくと言われ,憑りつかれた者やその家自体,他家から忌まれたりすることもあったという(「コックリさん」をやり,うまくコックリさんを帰すことができないと狐に憑かれる,とも言われる。ただし,これは自己暗示によりそう思い込んで精神を病むケースもあると聞く。)。
また,民間信仰の中で,憑りついた狐を落とすとして祈祷と称し,憑りつかれた者に暴行を加え結果死なせてしまうという事件も過去発生している。
余談であるが,私が学生の頃(平成一桁時代),アルバイト先の一歳年上の方から,興味深い話を聴いたことがある。
なんでも,その方の父親が捨てられた猫を川に流すか何かして殺したところ,狐憑きのような状態になってしまった,というものである(その後,その父親がどうなったかまで聞いたか,残念ながら相当昔の話なので記憶がない。)。
狐に限らず祟る動物はいるとされ,それらを総称して「狐憑き」とも呼ぶ場合があるが,いずれにせよ,無益な殺生はしてはいけないものである。
最後に,上記の話で出てくる「田戸」とは,いわき市四倉町字田戸のことのようである。ここには「犬突不動尊」というお不動様があり,この少年はここに隠れていたのだろうか。その場合,「犬」という名称が付く点で,何かいわくを感じてしまう(狐は犬が苦手とするため。)。