1 概要
華厳の滝は栃木県日光市にあり、中禅寺湖の唯一の流出口である大谷川に存在する、落差97メートルを誇る滝である。同滝は、同じ日光にある霧降の滝や裏見滝と合わせて日光三名瀑と称されるほか、那智の滝(和歌山県那智郡勝浦町)、袋田の滝(茨城県久慈郡大子町)と合わせて日本三名瀑と称される。
日光を代表する景勝地でもあるが、反面、自殺の名所としても高名である。そしてまた、心霊スポットとしても有名で、過去、心霊関係を取り扱ったテレビ番組では常連といえるほど登場していた場所である。
2 解説
私のように、テレビ番組で心霊番組が華やかに放送されていたのを見ていた世代(故冝保愛子氏がご存命であった。)にはお馴染みの場所ではなかろうか。
同滝が自殺の名所として高名であるが、そのような評判が立てられたのには次のようないきさつがある。
明治36年(1903年)、旧制第一高等学校(現在の東京大学等の前身となった旧制高等学校)の生徒であった「藤村操」が、滝の近くの木に「厳頭之感」と題する次の遺書を残し投身自殺を遂げたためである(享年16歳)。
悠々たる哉天壌、遼々たる哉古今、五尺の小躯を以て比大をはからむとす、ホレーショの哲學竟に何等のオーソリチィーを價するものぞ、萬有の真相は唯だ一言にして悉す、曰く「不可解」。
我この恨を抱いて煩悶、終に死を決するに至る。
既に巌頭に立つに及んで、胸中何等の不安あるなし。
始めて知る、大なる悲観は大なる樂觀に一致するを。
(なお、遺書をしたためた木は、後述するように影響を受けた自殺者が出たため、当局により伐採された。ただ、遺書を撮影した写真は現存しており、それが絵葉書として販売されていた(現在も販売されているかは未確認。)。)
その後、彼に影響を受け、同滝で次々と自殺する者が出たため、いつしか同滝をして自殺の名所とする評判が立ったのである。
現在は転落防止柵が設けられてはいるのだが、残念ながら、同地で命を絶つ方が現在でもいるのが事実である(私の知る限り、令和元年9月に2件の自殺があった。なお、遺体収容にかかる費用は遺族の方に請求されることになる。)
本来は上記のように、日本三名瀑の一つである景勝地である。今後、同様の悲劇が起こらないことを祈りたい。
展望台から望む華厳の滝。
なお、来訪時、通常の4倍の量の放水をしていたとのことで、恐ろしいまでの水しぶきが飛散し、カメラのレンズを濡らした。
日本三名瀑の名に相応しい名瀑といえる。