水俣城は熊本県水俣市にある標高約30mの丘陵にかつて存在していた城である。
同城の築城年は不明であるが，この地に勢力を有していた水俣氏の手により築城されたものとされている。
しかし，南北朝時代になると，次第に相良氏の勢力がこの地にも進出，長禄4年（1460年）にはついに相良氏の支配が及び，同城も相良氏の持城となる。
その後，同地は相良氏→島津氏→豊臣氏→寺沢氏→小西氏→加藤氏とその支配者が変遷，その間，同城もそれら支配者の持城となるのだが，慶長17年（1612年）の加藤氏の時代，江戸幕府が破却するよう命じたため，同年に廃城とされている。
ところで，同城においては現在，深夜や雨の降る夜などに，馬の鳴き声や蹄の音，また，ラッパの音や号令する掛け声などが聞こえてくるという怪奇現象のほか，兵士の幽霊が目撃される，と言われている。
なんでも，同城では明治10年（1877年）に発生した西南戦争の際の戦場となり，数多くの戦死者が出た場所なのだという（田原坂の戦いに匹敵する戦死者が出たのだとも。）。
しかし，確かに，水俣方面においても官軍や西郷軍が展開していたようではあるが，この地で戦闘が繰り広げられた，という文献自体は見受けられなかった。
ただ，同城址には，西南戦争で戦死した兵士を祀る官軍墓地が存在していることから，もしかすると，この墓地の兵士が未だ浮かばれず，現世に姿を現しているのやも知れない。
