1 概要
会津城下の酒造屋の妻が,子供を産むために実家に戻った。その間,主人は下女を納戸にひき入れ契りを結んだ。納戸の中は灯りを消しており真っ暗であった。
ふと,主人は下女から離れた。納戸には他に誰もいないはずなのに,ギシギシと臼を引く音がするためだ。
主人の眼が暗さに馴れてくると,納戸の隅で老婆が一人臼を引いているのが見えた。やがて,その老婆の顔がはっきりしてきた。それは,実家に戻っている妻の亡くなった祖母であった,
主人は慌てて灯りを点すと,老婆も臼もすでに消えていた。納戸婆は妻方の祖母がなるという。
2 解説
納戸婆は人家の納戸に棲んでいるという老婆の妖怪で,西日本で伝承されているという。特に,家人が納戸を掃除しようとすると中から飛び出して床下に逃げ込むという伝承が多いという。
特に何か悪さをするという訳ではなく,納戸から飛び出して人を脅かすというもので,元々は納戸の神様として祀られていたものが零落した姿のようである。