1 概要
延宝年間(1673年~1680年),高瀬村の川べりにある農家の子供が,河童と遊んだところ,一つの杯をもらったという。そしてその際,「この杯をもらったことは誰にも話してはいけない,話をしたら命がなくなる。」といわれたという。
この杯,不思議なことに,毎日金が一分ずつ出てきた。子供はそれで色々な物を買ったが,それを見て怪しんだ親達は子供に問いただすが,子供は杯のことは話さなかった。ますます怪しんだ親達は,子供が盗んだのだろうと責めたため,子供はついに話をしたが,話し終わると同時に頓死したという。
その後,この不思議な杯は,薬師寺の宝物になったという。
2 解説
高瀬村は現在の双葉軍浪江町高瀬のことだと思われる。同地には高瀬川が流れており,恐らくその川べりにこの農家一家が住んでいたのではなかろうか。
なお,残念ながら,この杯を宝物とした薬師寺がどこにある寺なのか,現在のところ定かではない(すでに廃寺となっていると思われる。)。