八幡平市にある松尾鉱山は，かつて硫黄を中心に採掘していた鉱山である。
同山では，古くから硫黄の存在は知られていたが立地の問題上採掘と輸送が困難であり，本格的に採掘が始まるのは明治44年（1911年）からである。鉱山から麓まで索道，そして鉄道を敷き，輸送を簡単にした結果，一時は日本の硫黄の生産量の30%，黄鉄鉱は15%を占め，東洋一の生産量を誇るようになり，鉱山町は最盛期には約1万3000人の人口に達した（昭和35年（1960年））。
特に，同山では労働者の確保を図るべく，公団住宅が一般化する前から水洗トイレやセントラルヒーティングを完備した集合住宅や学校等のインフラ，そして映画館や芸能人を招ける会館などを設置，当時の日本における最先端の施設を備えた近代都市が形成され，「雲上の楽園」とまで称された。
しかし，高度成長期に入ると硫黄の需要減や価格の安い輸入品の増加，そして，公害が増加したことにより石油工場に設置された脱硫装置から出来る硫黄の生産が活発化し，硫黄鉱石の需要は完全に途絶えてしまい昭和44年（1969年），母体会社は会社更生法を申請し倒産，全従業員は解雇されてしまう。
その後，黄鉄鉱に絞った採掘を試みた新会社が設立されるものの，この会社も昭和47年（1972年）に倒産，ついに松尾鉱山は閉山することになるのである。
現在，同山に残されているものはゴーストタウン化した廃墟が残るだけなのであるが，時折，心霊番組に取り上げられたりする程，心霊スポットとして有名な場所とも化している（特に大浴場が危険な場所であると有名らしい。）。
なんでも，謎の足音や扉をノックするような音が聞こえてくると言われているほか，写真写り込む謎の黒い人影，そして窓から覗き込む男性と思しき幽霊の姿など，様々な心霊現象が発生すると言われているのである。
