夕張郡栗山町を通る国道234号線には，「泣く木」と呼ばれる樹齢３００年を超えるニレの木の古株がある。
そして，この木には次のような悲しい由来が存在する。
明治時代，同地では室蘭線が敷営されていた。
その際，工事関係者は，たまたま近くを通りかかった女性に飯炊きの仕事を依頼した（年増の女性とも，津軽から来た娘とも言われている。）。
しかし，この女性は荒くれ者揃いの土工達の毒牙にかかり，日々嬲られる毎日を送ることを余儀なくされてしまう。
女性はは逃れられぬ苦しみにこの世をはかなみ，「我が霊をお守りください」と残して，このニレの木で自殺してしまう。
それからこのニレの木を伐ろうすとると，泣くような音を出し，それを聞いた人足達は眠ったり，木に斧を入れたところ刃が折れ，人夫が即死する事故が発生したといい，誰もこのニレの木を伐ることはできなかった（。
そして昭和45年（1970年），道路舗装工事により木を伐り倒そうとする道路公団と，それを反対する栗山町で一悶着が発生した。町としては，樹齢の長いこの木を伐ることは反対であった。
その最中，若い工事関係者の一人が夜中，酒に酔ってチェンソーを持ち出し木を伐り倒してしまう。しかし，作業後この工事関係者は原因不明の腹痛により死亡したという（この工事関係者の家族や周囲の人々にも不幸が降りかかったとされている。ただし，実際この工事関係者は無事だったともいい，真偽の程は不明であるが，この事件自体，当時地元の新聞に掲載された程の出来事だったのだという。）。
この話は同町史にも書かれている話のようであるが，実は，このニレの木に関する話はいくつか存在しているようである。
一つ目は，やはり室蘭線を敷営する際のことであるが，この工事は非常に困難を極め，多くの労働者達が寒冷な気候と過酷な労働に耐え切れず倒れ，その遺骸がこのニレの木の根元に無造作に埋葬されたのだという。
また，二つ目は，昔，この近くにアイヌ小屋があり，そこに住むアイヌの娘が和人の男と恋仲となったが，周囲に反対され，「この世では添えない」と悲しみ心中したのだという。
果たしてどれが真相かは不明であるが，上記の伐採後，この付近で交通事故が増加したり，何者かのすすり泣く声が聞こえた，また，女性の幽霊が目撃されたと言われている。
そこで，地元の方々が石碑を建てたり，ニレの古株近くに同種の木が植えて慰霊しているが，現在もまだ怪奇現象が発生しているのだと言われている。
