1 概要
旧西白河郡表郷村(現白河市),上願地区での話である。
同地区には,何百年前からの庚申塚,十三夜供養塔,六道地蔵,道祖神などの石仏が村はずれに祀られていたが,いつの間にかその場所はゴミ捨て場になり,やがて,地区用の火の見やぐらやポンプ小屋が建てられ,人々はそこに石仏が祀られていることを忘れてしまった。
しかし,その火の見やぐらが建てられてから約15年間に渡り,原因不明の事故や病気で亡くなる人が相次いだという。
具体的には,ある日突然,高熱を発したかと思うと呼吸困難に陥り,やがて死亡するもので,最初の10年間だけで21人も死亡したという。
しかも,死亡した人達は,村の消防団長や火の見やぐらを建設する際に携わった作業員など,火の見やぐらの建設に何かしら関係していた人達であった。
やがて,人々も,一連の怪死が火の見やぐらと因縁がある,と思い始め,調べたところ,古老達が,かつてその場所に石仏を祀ってあったと言い出すと,その祟りではないかと考え出した。
そこで,地区をあげて火の見やぐらとポンプ小屋を撤去・移転し,その下に埋もれていた石仏を掘り出して盛大な供養祭を行ったところ,不思議なことにそれ以降,怪死を遂げる人はいなくなったとのことである。
2 解説
庚申塚や供養塔などは,かつては各村々(現在の「字」単位に相当)のはずれ等に多く祀られていたもので,信仰の対象でもあったものである。
我々の先達(=先祖)が祀ったものを,後世の我々が粗末に扱ったことによる,いわば「先祖からの祟り」と言える類のものなのかも知れない。