福島県心霊スポット情報

福島県心霊スポット情報

福島県内の心霊スポット(全国に拡大予定、まずは東北から。)の概要とその情報について,霊感ゼロの四十雀が独断と偏見を交えつつ解説したいと思います。

掛け軸になった幽霊(大沼郡会津美里町)

1 概要

 会津美里町に松沢寺という寺がある。
 慶長9年(1604年),同寺に秀可という和尚がいた。ある秋の深まった夜更けのこと,夜中に秀可和尚が目を覚ますと,人気のないはずの本殿から,しくしくと女性の泣く声がして,何やら恨みかき口説いている様子であった。
 その声はか細く,秀可和尚の臓腑につき刺さるようで,何事かと襖越しに覗いて見ると,髪を振り乱し白装束を着た女性の幽霊が,本堂の床にひれ伏して嘆き悲しんでいた。秀可和尚は思わず,固唾を呑んで見ていると,やがて明け方近く,女性の幽霊はスーッと消えてしまった。

 秀可和尚は次の夜,女性の幽霊がどこから来てどこに去るのか,ひとつ正体を確かめてみようと思い,床の中に入り待っていた。
 すると,山門の傍らの茗荷畑から青白い燐光がパッと燃え上がったかと思うと,昨夜の女性の幽霊が痩せこけて青ざめた横顔を見せながらぼんやりと現れた。その凄惨な姿はまさに一幅の地獄絵図のようであった。
 これを床の中で見ていた秀可和尚は,この幽霊の絵姿を描き残しておいてやろうと一瞬思ったが,床の中のことなので筆墨の用意もなく,とっさの機転で枕元の懐紙を取ると,人差し指を噛み切り滴る血で取り急ぎ幽霊の姿を絵に写した。

 さて,次の夜,秀可和尚は檀家の法事に呼ばれ,夜更けに寺に戻り,山門の側まで来ると例の女性の幽霊が姿を現した。
 そして,たいそうさびしげな声で,
 「私は湯八木沢のおじゅん,という者の幽霊ですが,地獄に落ちてたいそう苦しんでおります。和尚様のお力でどうぞお助けください。」
 と,切々と訴えた。
 秀可和尚は御仏のありがたい教えを色々と説き,「本空禅定尼」という戒名を与え安心して立ち去るよう諭したところ,幽霊も安堵したのか,
 「なむあみだぶつ」
 と唱え姿を消した。

 その後,血書した幽霊の絵はどうしたことか無くなり,秀可和尚はもう一度その幽霊を思い出して見事な一幅の幽霊画を描きあげた。この幽霊の絵はやがて寺宝となった。
 また,山門の傍らの茗荷畑には,かなり後までも幽霊の出没した直径50cmばかりの穴が開いていたという。

2 解説

 幽霊を描いたという絵の話は全国的にいくつか点在している話であるが,特にこの話に出てきた幽霊の絵(幽霊の掛け軸)は現存しており,かつ,毎年開帳していることでも有名なものとなっている。