福島県心霊スポット情報

福島県心霊スポット情報

福島県内の心霊スポット(全国に拡大予定、まずは東北から。)の概要とその情報について,霊感ゼロの四十雀が独断と偏見を交えつつ解説したいと思います。

タクシーに乗った幽霊(郡山市)

令和2年7月17日 改訂

1 概要

 昭和の始めの頃,ある彼岸時の話である。
 郡山市にある如法寺の前を一台のタクシーが通りかかったところ,一人佇んでいた若い女性が手を挙げて車を停めた。

 当初,運転手はこの女性は客とは思わず,自分の知人と関係がある者ではないかと考えた。まだ,若い女性が自動車に乗ることはない時代だったのである。

 しかし,女性は,
 「母が危篤なので,下行合(郡山市にある地名)まで乗せて欲しい。」
 と言う。
 見たところ,その女性は身なりも発する言葉にも怪しいところがないため,運転手は車に乗せ,下行合へと向かった。

 するとどうしたことだろう,急に後部座席から赤ん坊の泣き声が聞こえてきた。車に乗り込むときは女性一人と思っていたが,赤ん坊を抱いていたのか,と,運転手は気にもしないで車を走らせた。

 やがて車が下行合まで来た時,バックミラーを見ると,女性の顔が見えない。横にでもなっているのかと思い,
 「お客さん,お客さん」
 と声をかけたが返事はない。
 そこで運転手が振り返り後ろを見ると,やはり女性の姿は見えない。運転手は驚いて無意識のうちにブレーキを踏み車を停めた。

 するとどうしたことか,女性は,
 「私はここで降ります。」
 と言い,自動車のドアを開けると,
 「今はお金の持ち合わせがないが,○○番地の家は私の婚家だからもらってください。」
 とはっきり言うと,そのまま姿を消した。

 運転手は何がなんだか分からなくなったが,お金を貰わなければと,女性が言った番地を探して行ってみると,そこの父親と思われる人が出てきて,
 「また出たか,本当に困ったものだ」
 と,ちゃんと料金を払ってくれた。
 運転手は念のため後部座席を確認すると,女性が座っていた席はびっしょりと濡れていたという。
 
 後,運転手は下行合に住む知人に話を聞いてみたところ,その女性は以前,難産の後の産後の肥立ちが悪く,赤ん坊を残してこの世を去ったとのことで,今も赤ん坊のことが忘れられず,ミルクを買うためにあちこちさ迷い歩いているとの話であったという。

2 解説

 上記のようにタクシーに幽霊を乗せたという話は全国各地に残るもので,類似する話としては,以下の昭和七年(1932年)10月3日付けの報知新聞に掲載された話がある。

 <圓タクが幽霊を乗せた話。
 向島区業平町58 I方自動車運転手Y(23)が,数日前,雨のしょぼしょぼ降る深夜,青山墓地付近を流しているなか,22,3歳位の美しい娘を,下谷まで50銭の約束で乗せた。
 同区谷中町27地先の門構えの家の前で
 「ここが私の家です。」
 と自動車から降りた女は料金を払わずにスーっと門内に消えた。
 運転手は玄関へ家人を呼び出し,娘さんを乗せてきた話をして料金を請求すると
 「私の家には娘はありません。死んだ娘の今日が一周忌に当たるので供養しているところです。では,仏が帰ってきたのでしょう。」
 と,料金を一圓くれたが,運転手も気味が悪くなって交番に駆け込んでそのことを訴えた・・・ウソのような事実談です>

 幽霊を乗せたという話が新聞に載るということは現代ではあまり考えられないものである。新聞自体は明治以降発刊されはじめたが,現在の新聞とは違い,上記のような怪談話や妖怪話の類いも多く掲載されていた。恐らく,江戸時代の瓦版のような感覚でこのような幽霊話を記載したと考えられ,書かれている記事の内容にどの程度信憑性があるものかは不明である。

 なお,タクシーに乗った幽霊話自体は,上記の掲載後も,例えば昭和三十五年(1960年)7月15日付けの読売新聞にも掲載されたほか,平成七年(1995年)頃には,学習院大学前から青山墓地の手前まで乗せてほしいとタクシーに乗り込む女性の幽霊の怪談話も存在している。

 今宵も,タクシーを待つ幽霊がどこかで佇んでいるのやも知れない。