福島県心霊スポット情報

福島県心霊スポット情報

福島県内の心霊スポット(全国に拡大予定、まずは東北から。)の概要とその情報について,霊感ゼロの四十雀が独断と偏見を交えつつ解説したいと思います。

原村百姓馬の祟りを受けし事(会津若松市)

1 概要

 原村という所に、心のあまり良くない馬方がいた。欲張りで無法なこの男は、馬にろくな飼料も与えず、昼夜駄賃取りに使っていた。この者は別に貧しくはないのだが、馬に酷い仕打ちをするので、村人は馬方を良く言わなかった。

 ある日、馬方が馬を引いて赤井村の村外れにある石橋の際まで来たところ、馬が盛んに嘶くので振り返ると、付けてある荷物を落とし、馬方に襲いかかろうとしていた。
 馬方はいつものこと、くらいに考え、綱を持ち打つと、馬は引き綱を切って食いつこうとする。馬方は辺りの丸木を拾い馬を打つと、馬はますますいきり立ち馬方を追い回す。馬方は手を付けることができず逃げるしかなく、その後を馬が追いかけた。

 馬方はついには村に逃げ帰り、自分の家に入り戸を立てて内にいると、馬もまもなく追って来て、板戸を蹴破り内に入る。馬方は仕方なく納戸の内に逃げ込み戸を立てて息を殺していると、またこの戸も踏み破り入ろうとする。
 馬方は恐ろしさにどうする術もなく、ようよう梁の上に登ると、馬もまた梁の上に跳ね上がろうとするので、仕方なく屋根に逃れると、馬もまた屋根に登ろうとする。
 近所の人も集まってきたが、この馬を留めることはおろか、側にも近寄れない有様である。

 そして、馬方は屋根を伝って転げ落ち、山の方へ逃れると馬もまた追いかけてくるので、馬方は仕方なく木に登ると馬も木に登ろうとする。そこで馬方は木から飛び降り、谷に下り、そして峰に登り逃げ回るうちに日が暮れてきたので、馬も追うことを諦めて家に帰り、家の中のものを残らず噛み壊し踏み壊し、ついには狂死した。

 馬方は夜が更けてそろそろ山を降りて、家に戻るとこの有様である。馬の怨念の恐ろしさに今更ながら自分の不徳を恥じて、馬を良い所に埋めて、僧を頼んで懇ろに弔った。そのためか、馬方はその後無事に過ごしたという。

2 解説

 この話は,原文では「安積組原村」と書かれているが,会津領にはそのような村がないため,「会津組原村」の間違いではないかと思われる。
 また,話のタイトルは「馬の祟りを受けし事」とあるが,祟りを受けた,というよりは,馬方の過酷な使役が原因で馬から怒りを買った,という話である(動物の種類は違うが,今でも酷使された象が怒り,象使いを殺す話が時折があるが,それに近いのではないだろうか。)。
 現在でも残る「馬頭観音」はというものは,馬の供養のための石碑という一面も持ち合わせている。この話は,馬を大事にするための説話的な意味合いも持ち合わせているように思えてならない。