1 概要
米代辺りにある某の屋敷には,色々怪しいことがあるという。
この屋敷の中にある古井戸は,家主に凶事がある時,井戸の水が血の様に赤くなるので,血の池屋敷と言われている。
また,家主の身の上に何か変事がある時,大病がある時は,70歳程度の老女が現れる。その老女は,少しばかりの災いがある時は裏を歩き,大きな災難のあるような時は家の中に入り,茶の間の辺りを歩き回り,あるいは囲炉裏端でお茶を飲むことなどがある。
そのような時は,騒いだり老女を追い出したりすると,かえって悪いことがあるといい,家の者は鳴りを静めているという。
さらに,屋敷の裏にある土蔵の戸が夜更けにガラガラと戸が開く音がすることが月に一度か二度あるという。
ただし,開く音だけがして閉てる音がしないのはどういう訳なのだろうか,あるいは件の老女の仕業なのだろうか。
2 解説
屋敷に住み着く妖怪である座敷童子は幸運をもたらすというが,この老女は変事を伝える存在のようである。
ただ,変事を伝えてくれるのはいいが,それを回避する方法が分からなければ,あまり気持ちの良い存在ではないだろう(追い出そうとしたりするとかえって悪いことが起きるのであれば尚更である。)。