1 概要
本四ノ丁辺り,侍屋敷に仕える小女がいた。
夕方薄暗くなり,裏の菜園に野菜を採りに行くと,8,9歳くらいの子供がひょっこり現れた。小女は,近所の子供だろうと思い気にもとめないでいると,その子供が「お姉さん,お金欲しい?」と聞くので,小女は「欲しい」と応えると,その子供はこれか,と言うので,その顔を見てみると,耳も鼻もない,目一つでこちらを睨んでいた。小女はハッと言って気絶してしまった。
家の者は,こんなに暗くなっているのにどうしているのかと,小女の名前を呼んだが返事がないので,裏口に行ってみると気絶して倒れている小女を見つけた。
驚いて気付け薬を含ませ,水をかけてやるとようやく気が戻り,一つ目童子のことが分かったという。
2 解説
一つ目童子,即ち一つ目小僧の話である。よくある話では,一つ目である以外はほぼほぼ人間と同じ姿をしているように描写されているが,このように耳や鼻がないというのはあまりなく,殊更不気味度が増す話であるといえよう。