福島県心霊スポット情報

福島県心霊スポット情報

福島県内の心霊スポット(全国に拡大予定、まずは東北から。)の概要とその情報について,霊感ゼロの四十雀が独断と偏見を交えつつ解説したいと思います。

允殿館大入道(会津若松市)

1 概要

 飯寺村に,庄九郎というものがいた。この者は小力の持ち主で,相撲を取ったり,米俵5,6俵背負い歩いたりするほどであった。

 庄九郎には,南町という場所に親類がおり,どうしても行かなくてはならない用事ができ,雨のそぼ降る黄昏時に宿を出て,中野の十文字原を通り,允殿館にある二つ五輪の前から成願寺に出ようと,弘眞院北の細道を通ると,荒神堂の大杉の下に白いものを見つけた。

 怪しく思った庄九郎は立ち止まりよく見てみると,その白いものが間近に来た。それは,顔の長さが三尺(約90センチメートル)もある女性で,竹杖をついて髪を振り乱しており,眼は皿のようで,帷子を被り待て待て,と言ってきた。

 庄九郎は強かな者なので少しも驚かず,脇差に手をかけ,おのれ,我に何の用だ,と足早に行き通ると,その女性は,帰りにこの道を通ってみよ,その時は思い知らせてやる,という。庄九郎はこれを聞かぬふりをして南町の親類宅に赴いた。この時,親類宅には人がたくさんいたが,庄九郎の顔を見ると,あなたの顔色は尋常ではない,道中口論でもしたのか,と尋ねられたので,庄九郎はことのあらましを語ると皆驚き,允殿館には化け物がいると言い伝えられていたが本当だったとは,必ず帰る時には晒屋町へ出て湯川を渡り,石塚前より材木町へ出て帰る方がよい,と言った。

 しかし,庄九郎は,元来た道を帰らないのは臆病だと笑われると思い,近道ということもあり,元来た道を帰ることにした。夜も深々と更け,杉の梢を渡る風も身にしみじみとして恐ろしく,髪の毛が立ち上る思いであった。すると,道には先程の女性がいて,庄九郎を見て,お前は先程の奴,それ,とり逃がすな,と言葉をかけると,真っ黒な大入道が大手を広げて飛び掛ってきた。

 この時,庄九郎は日頃の強気も失せ,一目散に飯寺村に駆けつけ,戸を蹴飛ばして家の中に入り,気を失い死んだようになった。その後,4,50日は伏せていて,ようやく気色もいつものとおりとなるが,以降は大臆病者となり,気が抜けて日暮れは外出もできないようになった。
 そして明くる春,江戸に夫役として向かうが,半年ほど過ぎて江戸で死んだという。

2 解説

 庄九郎が住んでいたのは現在の会津若松市門田町付近で,そこから南町(鶴ヶ城外郭南に位置していた町。晒屋町も含まれる。)に向かう途中での出来事のようである(なお,上記に出てくる「弘眞院」は,現在も門田町に存在しているようである。)

 允殿館も門田町付近に存在していた城で,現在は薬師公園に城址が整備され,館薬師堂や蒲生秀行廟所が建てられている。
 同館の築城時期は不明で,蘆名氏に臣従していた松本氏が館主とされている。松本氏は幾度が蘆名氏に叛いたようで,同館を攻められてもいる(松本氏はその一族が幾度も蘆名氏に討たれている。)。
 なお,いつ頃同館が使われなくなったかは不明であるが、因縁めいた館である。