福島県心霊スポット情報

福島県心霊スポット情報

福島県内の心霊スポット(全国に拡大予定、まずは東北から。)の概要とその情報について,霊感ゼロの四十雀が独断と偏見を交えつつ解説したいと思います。

おぼ抱き(河沼郡柳津町)

1 概要

 元禄年間(1688年~1704年),袖山(大沼郡会津美里町)に馬場久左衛門常智なる人物がいた。常智は信仰心が厚く,ある年,柳津の福満虚空蔵へ丑の刻詣りを始めた。

 袖山から柳津へは,高田の里を通り,入田沢,大野新田を通り,大平山,そして早坂峠を抜ける必要がある。この困難な道を苦とせず常智は黙々と参詣を続けた。

 そして満願の夜のこと。常智はいつもどおり柳津へ向かうと,途中,早坂峠で,前方が急に明るくなったかと思うと,一つの人影が現れた。それは,おぼ(赤子)を抱いて髪をざんばらに垂らした,まだうら若い女であった。

 常智は足を止めたが,女の方はすでに常智の姿を認めているらしく,白い顔をほころばせながら音もなく歩み寄ってきた。常智はこの女が魔性の者と思っていると,女は,「そこの旅の人,ちょうど良いところでお会いした。私はこの子がいるため髪を梳く暇もない,私が髪を梳くまでの間,この子を抱いてくれないか。」と声をかけてきた。

 もし申し出を断れば,女が魔性の者であればどんな禍が降りかかるかわからない,常智は黙って頷くと,女は「私が髪を梳く間,この子を泣かせなければお礼を差し上げる。ただし,泣かせるようなことがあれば,その時はそなたの命を貰い受ける。」と言うかと思うと,一瞬にして微笑みは消えうせ,キッとした物凄いまなざしになった。

 常智は女からおぼを受け取ると,(おぼとはいえ妖怪の子。まともに抱いたのでは喉許に食いつかれるのではないか。)と考え,おぼを外向きにして抱き,また,おぼが退屈しないよう,羽織の紐を解いてその端を持たせた。

 するとおぼは,左右の紐を合わせながら,その両端の房をそろえようとするが,羽織の紐は一方が短く,一方が長く,しごいてくるうちに片方の紐だけが指から落ちしまう。おぼは飽きずに,羽織の紐を揃えようとしていた。

 その間,女は歯がゆいくらい,ゆっくりと髪を梳いていたが,やがてようやく梳きあげた髪を結い終わった。ちょうどその時,一番刻を告げる鶏の声が聞こえてきた。女は,「もう夜明けも近い,よくぞこの子を泣かさずお守りをしてくれた。おかげで私も久しぶりに髪を梳くことができた。ついてはお礼のしるしとしてこれを差し上げましょう。」と言い,懐中からなにやら紙包みを出して常智に渡すと,そのまま霧が消えるように消えうせた。

 常智は手にした包みを開けてみると,中には切餅(一分銀100枚を紙に包んだもの。)であった。その後,常智の家ではよいことが続き,いつしか大の分限者になったという。

2 解説

 おぼ抱きに関する話は,特に会津地方に多く伝わる。今回の話以外にも,次の場所に分布している。

① 大沼郡会津美里町永井野
② 北塩原郡熱塩加納村栗生沢
③ 河沼郡会津坂下町津尻
④ 南会津郡南会津町伊南
⑤ 大沼郡金山町坂井
⑥ 南会津郡桧枝岐村

 大抵の場合,上記の話同様,夜道に赤子連れの女が出てきて,髪を梳く間その赤子を託され,泣かせなければお礼をもらえる,というものである。
 このおぼ抱きの正体は難産で死んだ女性の幽霊などといわれており,妊婦の妖怪である「産女(姑獲鳥)」に似た存在のようである。

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